その理由としては、
- どんな治療をした?
- 治療している時の状態は?
- 治療中の気持ちは?
- 最期はどうする?
など気になることが山ほどあるからです。
自分たちでもいろろ考えますが、それでも想像には限界があります。
ですので他の人の情報には敏感になるのです。
そんな中、ガン闘病後に残念ながらお亡くなりになった作家である
山本文緒さんの「無人島のふたり~120日以上生きなくちゃ日記」
の情報が目に入り、いてもたってもいられなくなり読んでみました。
今回は、山本文緒さんの「無人島のふたり~120日以上生きなくちゃ日記」を
読んだ感想を書いておこうと思います。
「無人島のふたり~120日以上生きなくちゃ日記」について
名前は知っていたけれど、どの作品も読んだことのなかった山本文緒さん。
ご存じの方も、山本さんの本のファンの方もいらっしゃるかと思います。
山本さんの最近の作品でいうと「自転しながら公転する」は、
我が近所の図書館でも予約数も多く人気の作品です。
(というのを知ってはいたけどまだ読めてないですが…。)
そんな小説家としても有名な山本さんの生前の最後の日記がこの
「無人島のふたり~120日以上生きなくちゃ日記」です。
小説のようなストーリーがあるわけでもないですが、
簡単な概要としてはこんな感じです。
- 山本文緒さんの亡くなるまでの日記
- 2021年4月にすい臓がんと診断され
- その後、治療をしないと決断
- 2021年5月から緩和ケアにて過ごす間の日記
- 病気の経緯も記載あり
概要をみてもらえれば分かるかと思いますが、正直に
明るい未来がくるハッピーエンドの作品ではありません。
ですので、メンタル的に弱っている方には実際おススメはしたくはありません。
が、気持ちの余裕がある時に「最期について考える」際には読んでみるのも悪くないかと個人的には思っている本です。
短い文章の中に色んな気持ちがギュッと込められてる本
表現力がスゴイので、色んな情景や気持ちがスッと入ってきてしまいます。
闘病中の出来事であれば、今の時代、私が書いてるようなブログなどの
SNSが発達しているのでリアルタイムで色んな方の闘病中の状況を知ることができます。
もちろん、他の方の闘病記も共感できたり励まされたりするのですが、
この本は小説のように長文ではなく、
やはり作家さんだけあって短い日記なのに
表現が上手なのでスッと気持ちに入ってきて、
あっという間に読み終わってしまいます。
私は患者本人ではありませんが、患者家族として考えることも多くあります。
ただ、患者本人の本音なんてなかなか聞けるものではありません。
なので、私はこの本を読んで
ガンで最期を過ごす人の心情を知ることができた
という部分において読んでよかったと思ってます。
今回はその中でも
私がこの本を読んで印象に残ったところ以下の3つをご紹介します。
- やはり死にたくないという本音
- 患者と家族はまさに「無人島にいる」感じ
- 家族を置いて死んでいくことへの気持ち
やはり死にたくないという本音
6月6日(日)
寝ても寝ても眠い。
(中略)
私の人生は充実したいい人生だった。
(中略)
その終わりを、私は過不足ない医療を受け、人に恵まれ、お金の心配もなく迎えることができる。だから今は安らかな気持ちだ…、余命を宣告されたら、そういう気持ちになるのかと思っていたが、それは違った。
(中略)
そんな簡単に割り切れるか、ボケ!と神様に言いたい気持ちがする。
読みながら、笑ってしまいました。
不謹慎でごめんなさい…
私も夫もいつかは人は死ぬんだから、できるかぎりやりたいことをやろう!
という気持ちが強いのですが、やはり余命を聞いて
「はい、そうですか。」
と割り切れることなんてできませんでした。
どんなに充実した良い人生でもやはり最期を迎えるのは嫌だよなー
と同じ気持ちなんだなと救われたような気がしました。
ガン患者と家族はまさに「無人島にいる」感じ
6月9日(水)
夫の妹Tちゃんが関西からわざわざお見舞いに来てくれた。
(中略)
突然20フィート超えの大波に襲われ、
ふたりで無人島に流されてしまったような、
世の中の流れから離れてしまったような我々も、
・・・(省略)
7月8日(木)
(省略)
東京に4度目の緊急事態宣言が出た。
この病気になって夫とふたり無人島にながされているような日々を送っているけれど、
…(省略)
この「無人島にいる」感覚がすごく共感できました。
今はTVなどでも2人に1人はガンにかかる時代と言われてますが、
実際に自分の身近でガンに罹ってる人っていますか?
私は幸せなことにほぼいなくて、どこか他人事でした。
だからこそ、実際に自分がガンに振り回される立場になった時に
周りとの温度差や
出来事への見え方、感じ方が変わっていき、
日々の最重要案件=癌(病気)
になってしまい、
どこかに取り残されてるようなそんな気分になるんですよね。
もちろん、著者の山本さんも旦那さんとふたりで、
私も夫とふたりで他に子供がいないからかもしれませんし、
過ごしている環境も似ているからかもしれません。
だけれども、じゃあそれが悪いかって言ったらそうでもなくて。
無人島で最期をどう心地よく過ごすか?
にフォーカスを当てられるのも悪くないのかなって、
最後までこの本を読んで感じさせてもらいました。
家族を置いていくことへの気持ち
6月16日(水)
(省略)
素晴らしいカフェで私は夫に「葬儀のことはどんなふうに考えているの?」と恐る恐る聞いた。案の定涙ぐむ夫。
(省略)
著者本人や旦那さんの性格もあるかとは思いますが、
日記のあちこちから、残される夫への心配や夫への愛を感じました。
私が夫を置いて先に…となっても著者と同じだろうなと。
とは言え、残される夫のために淡々とやるべきことをやる、
そうしていくうちに自分の中の気持ちと折り合いをつけていくんだろうな、
と感じたりもしました。
知っておけば、みんなそうなんだと安心できそうな気がする
身近な人が最期の日々の気持ちを語ってくれることはほとんどないと思います。
だから、どんな気持ちで最期の日を迎えるのか、を知る機会はほとんどありません。
知らなければ、なんで私だけ?こんな思いを!!?を感じるでしょう。
もちろん、その時の感じ方は人それぞれ多少異なるかもしれませんが、
共通する部分もあるはずです。
だから、私(もしくは夫)が最後の日を迎える時にはきっとこの本を思い出すと思います。
こんな思いは私だけじゃないと思えるからです。
最後の最期まで筆を執っていただいた山本文緒さんに感謝いたします。
亡くなったあとで恐縮ではあるけれども、
山本文緒さんの作品を読んでみようと思っています。
それでは、またッ☆